“泳ぐ刀”の秘密
11月11日といえば「ポッキーの日」……ですが、実はそれだけではありません。
この日は、知れば知るほど面白い魚、「タチウオ(太刀魚)の日」なんです!
今回は、なぜタチウオの日なの?から、思わず誰かに話したくなる豆知識、
そして「水族館でタチウオを見るのが、なぜこんなに難しいのか」まで、
タチウオについてご紹介します。
なぜ11月11日が「タチウオの日」なの?
タチウオの日を記念日として制定したのは、
東京・池袋のサンシャイン水族館です。日本記念日協会に申請して、
正式な記念日になりました。
由来は、タチウオの泳ぎ方にあります。タチウオは頭を上にして立つように泳ぐ魚です。
その姿が数字の「1」に見えることから、「1」がいちばん多く並ぶ11月11日が選ばれました。
知ると誰かに話したくなる! タチウオの豆知識4選
見た目も生態も、魚の中でトップクラスに個性的なタチウオ。その意外な素顔を紹介します。
① 銀色の体は「ラメ」の原料だった
タチウオには、ウロコがありません。その代わりに体を覆っているのが、
「グアニン」という銀色の層です。
このキラキラした層は、かつてマニキュアのラメや、
人工真珠の材料として使われていました。あの美しい銀色は、本当に「宝石級」だったんです。
② 口の中は、まるでカミソリ
おとなしそうな顔をしていますが、口を開けると、
鋭い牙がずらりと並んでいます。大人のタチウオの歯は、
人の肌を簡単に切ってしまうほど。釣り上げたときに、
うっかり口元に指を近づけるのは厳禁です。
③ 立って泳ぐのは「待ち伏せ」のため?
タチウオの日の由来にもなった「立ち泳ぎ」。頭を上に向けて、
上を通りかかる小魚を狙っているから、と言われています。
いつも立っているわけではなく、体を横にして泳ぐこともあります。
④ 尾びれも腹びれもない
タチウオの体をよく見ると、尻尾の先は細くとがっていて、尾びれがありません。
お腹のひれ(腹びれ)もありません。その代わり、背中にある長いひれを
波打たせて泳ぎます。まさに「泳ぐ刀」です。
水族館でタチウオを見るのは、とても難しい
実は、タチウオを水族館で展示し続けるのは、とても難しいのです。
何がそんなに難しいのか?ひとつずつ見ていきましょう。
難しさ① 体がとにかくデリケート
タチウオの体を覆う銀色のグアニンは、人の手が触れるだけで剥がれてしまいます。
ウロコがないので、傷がつくとそこから弱ってしまうのです。
そのため、水族館では網ではなく釣りで採集します。
それも、針の「かえし」をつぶした特別な針を使い、釣り上げたら約10秒で針を外すという、
スピード勝負の作業です。
難しさ② 深い海から一気に引き上げられない
タチウオは、水深60mほどの深いところにいることがあります。
そこから一気に釣り上げると、水圧の変化で浮き袋に空気がたまり、
体を傷めてしまいます。そこで、タチウオが水深10〜20mほどまで
浮き上がってきたタイミングを狙って釣るそうです。
難しさ③ 運ぶのもひと苦労
タチウオは、ときどき水面からジャンプします。
そのため、運ぶときは飛び出さないようにシートをかぶせます。
さらに、傷が炎症を起こさないよう薬を入れた水で運び、
水槽の揺れを抑えるために、段差の少ない道を選んで走るのだとか。
難しさ④ 一緒に暮らせる魚が少なく、エサもなかなか食べない
体が弱いタチウオは、ほかの魚につつかれるだけで傷ついてしまいます。
そのため、ほかの魚と同じ水槽で飼うのは難しいのです。
そもそも、タチウオの暮らしにはまだ分かっていないことも多く、
手探りで飼育方法を見つけていくしかないそうな…。
苦労の末、ついに「いつでも会える」ように
サンシャイン水族館がタチウオを展示したのは、
2017年が約20年ぶりとのことです。その後も展示に挑戦してきましたが、
当初は短い期間で展示を終えざるを得ないこともあったそうです。
そして、数々の工夫を重ねた結果、2025年4月から常設展示が始まりました。
今は館内1階の「天を仰ぐ太刀魚」水槽で、
立ち泳ぎするタチウオの姿をいつでも見ることができます。
タチウオの日の記念日は、この苦労と挑戦があったからこそ生まれたものなんですね。
水槽の前に立ったら、ここまでの裏側の苦労も思い出してみてください。
最後は「おいしく」いただきたい!
タチウオは傷みやすい魚なので、スーパーでは塩焼き用の切り身が定番です。
ですが、新鮮なタチウオのお刺身は、上品な脂とほどよい歯ごたえで絶品。
皮目をバーナーでさっと炙った「炙り」も、一度食べたら忘れられないおいしさです。
タチウオの水揚げで知られる和歌山県有田市には、タチウオを骨ごとすり身にして揚げた、名物の「ほねく」もあります。
秋はタチウオ釣りのシーズンでもあります。
食べるもよし、釣るもよし、水族館に会いに行くもよし。
今年の11月11日は、ぜひタチウオに注目してみてくださいね!






