AIの法律
「AIの法律ができた」というニュース、最近よく耳にしませんか?
ChatGPTや画像生成AIが当たり前になって、とても便利になりました。その反面、「ニセモノの画像やニュースが増えるかも…」「勝手にデータを使われて、著作権は大丈夫?」といった不安もつきまとうようになりました。
そこで今、世界中で「AIの使い方に、ちゃんとルールを作ろう!」という動きが急速に進んでいます。
今回はこの難しいテーマを、「世界」「日本」「私たちの会社や仕事」の3つの視点で、ざっくり解説します。
※2026年11月時点の情報をもとにしています。
世界でいちばん厳しいEUは「法律でしっかり縛る」
まず、いちばん厳しいのがヨーロッパ(EU)です。2024年に「AI規制法(AI Act)」という法律を作り、段階的に適用を始めています。
- リスクの大きさで4段階に分ける:AIを「禁止」「高リスク」「限定的なリスク」「最小限のリスク」の4つに分け、リスクが大きいほど厳しいルールを課しています。
- 危険なAIは禁止:人の弱みにつけこんで行動を操るAIや、人の振る舞いを点数化して不当に扱う「ソーシャルスコアリング」などは、2025年2月から禁止されています。
- ローン審査や採用のAIは「高リスク」:禁止ではありませんが、厳しい条件を満たさないと使えません。
- AIで作ったものは、AI製だと分かるように:本物そっくりの画像や動画(ディープフェイク)などは、AIで作ったことを示すルールがあります。冒頭の「ニセモノのニュース」への対策のひとつです。
- 違反したら巨額の罰金:最も重い違反では、最大3,500万ユーロ、または世界全体の年間売上高の7%のどちらか高いほう。大企業なら、とんでもない金額になります。
ただし、EUも一気に全部を進めているわけではありません。2026年7月の法改正で、高リスクAIに関するルールの適用が、2027年12月以降に先送りされました。
このルールはEUの企業だけのものではありません。EU向けにAIを使った製品やサービスを提供する日本企業も対象になるので、他人事ではないのです。
日本は「法律はあるけど、罰則なし」スタイル
では、日本はどうでしょうか。
実は日本にも、AIの法律があります。2025年に「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(AI法、AI推進法とも呼ばれます)ができ、同じ年の9月から全面的に施行されています。
ただし、EUとは考え方がまったく違います。
- 目的は「規制」より「推進」:AIの研究開発や活用を後押しするための法律です。首相をトップとする「AI戦略本部」をつくり、国としてAIの基本計画を定めることになっています。
- 罰金などの罰則はない:EUのように、違反した企業から罰金を取る仕組みはありません。
- 細かいことはガイドラインで:AIを開発する企業や使う企業が気をつけることは、総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン」という“お手本”で示されています。
なぜ、こんなに優しめなのでしょうか。最初から法律で厳しく縛ると、新しい技術やサービスが生まれにくくなるからです。イノベーションにブレーキをかけないよう、あえて柔軟なやり方を選んでいます。
気になる著作権は?
日本の著作権法では、AIの学習のために他人の作品を使うことは、原則として認められています。ただし、作品の持ち主の利益を不当に傷つける場合は別です。
また、AIで作った画像や文章が既存の作品とそっくりで、その作品をもとにしていると認められれば、普通の作品と同じように著作権の侵害になることがあります。「AIが作ったからセーフ」にはならない、ということです。
私たちの会社や仕事はどうなる?
国のルールが見えてくると、次は「うちの会社では、AIをどう使う?」という社内ルール(社内ガイドライン)づくりが始まります。今、多くの企業のIT部門や法務部が頭を悩ませているところです。
- 「とりあえず全面禁止」では置いていかれる:情報漏えいが怖いからといって生成AIを全面禁止にすると、AIを使いこなす他社に、仕事のスピードで差をつけられてしまいます。
- 「最後は人間が確認する」が基本:AIに丸投げせず、AIが作った書類やプログラム、画像は、最後に必ず人が確認してから使う。こうした、人間が判断に関わる仕組みを「ヒューマン・イン・ザ・ループ」と呼びます。
- 「入れてはいけない情報」を決めておく:顧客の個人情報や社外秘の資料など、AIに入力してはいけない情報をあらかじめ決めておきます。
- トラブルが起きたときの動き方を決めておく:「もし社員が社外秘のデータをAIに入力してしまったら?」というときに、誰に、どのくらい早く報告するのか。初動の手順を決めておくことも大切です。
まとめ:ルールは「AIを安全に使い倒すため」のもの
これからのAIのルールは、「国が決める大まかなルール」と「会社ごとに作るリアルな校則」の組み合わせで進んでいきます。
- EUは、罰金つきの法律でしっかり縛る
- 日本は、推進のための法律とガイドラインで、柔軟に進める
- 会社は、その間を埋める社内ルールを作る
どのルールも、AIを使わせないためのものではありません。「どうすれば安全に、AIを最大限使いこなせるか」を考えるためのものです。
まずは、自分の会社にAIの社内ルールがあるかどうか、一度確認してみてはいかがでしょうか。






